いい男の条件とは?(旧ブログから再掲)
(2008年9月23日記載分)
秋の河畔を歩いていると、盛んに水しぶきが立つ音が響きます。産卵場を巡ってサケの仲間の雌同士が、また雄同士の雌を巡る小競り合いが繰り広げられている音です。

水面からのぞくコブのようなものは、雄のカラフトマスの背中です。
サケの仲間は産卵期が近づくと、二次性徴と呼ばれる「鼻曲がり」、「セッパリ」、「婚姻色」などの外見的、形態的な特徴があらわれます。これは雄に顕著にあらわれます。
毎日、河畔から産卵行動を観察していて、疑問に思ったのが今回のタイトルです。同じような雄個体が大勢いる中で、雌とペアを組む個体とはどんな個体なのか?
サケの仲間には、残留型と回遊型という2つの生活型があります。残留型(ずっと川の中で生活する個体)の雄は回遊型(降海型)に比べて体が小さく、産卵場では雌を巡る闘争にはほとんど参加しません。そのため、産卵の瞬間にペアの隙間に割り込んで繁殖を行います(スニーキング)。一方、回遊型の雄は体が大きく、二次性徴が顕著に発達します。産卵場では回遊型雄同士のファイティング(体当たり、噛み付き、追いまわし等)により雌を獲得します。一般には、体の大きな雄から順に、順位を形成することが多いようです。
それでは、この二次性徴の持つ意味は何でしょうか?

この写真は、カラフトマスの雄同士が体当たりをしている場面です。セッパリは、この写真のように闘争時に体を保持する盾の役目を果たすと考えられています。また、他の雄や雌に対して自分の体を大きくみせる役目を果たしているとも考えられます。

婚姻色は、雌へのセックスアピールや、雄同士では順位を表す指標になっていると考えられます。産卵行動を観察していると、雌に一番近い場所にいる雄の婚姻色ははっきりと見え、劣位な雄では模様がくすんで見えることが多いです。
鼻曲がりは、雄同士の闘争に直接使う部分です。大きなアゴで相手に噛み付き、傷を負わせる役目に特化している部分と考えられます。
体が大きければ二次性徴もそれに応じて顕著になります。繁殖成功率を考えると雄は皆体が大きい方がよいのでは?と考えても必ずしもそうではないようです。
産卵に遡上する河川の規模や、遡上する時期の気象条件によって同じ川でも年によって「いい男の条件」は一定ではないようです。例えば、水深が深く流れの速い場所で産卵を行う集団では、体が大きい雄の方が安定的に繁殖に参加できると考えられます。しかし、水深が浅い上流まで遡上して産卵を行う集団において、大きな体はファイティングには向いても産卵場への遡上には向かないでしょう。それぞれの河川に見合った魚が長い年月をかけて自然選択され、その川を象徴する形として残っていると考えられます。
以前、釣り場で出会った古老から聞いた「この川の魚はこんな体つきが特徴」、「あの川の魚は(昔は)太かった」という話には、こんな仕組みが関係しているのではと、ふと考えました。
秋の河畔を歩いていると、盛んに水しぶきが立つ音が響きます。産卵場を巡ってサケの仲間の雌同士が、また雄同士の雌を巡る小競り合いが繰り広げられている音です。

水面からのぞくコブのようなものは、雄のカラフトマスの背中です。
サケの仲間は産卵期が近づくと、二次性徴と呼ばれる「鼻曲がり」、「セッパリ」、「婚姻色」などの外見的、形態的な特徴があらわれます。これは雄に顕著にあらわれます。
毎日、河畔から産卵行動を観察していて、疑問に思ったのが今回のタイトルです。同じような雄個体が大勢いる中で、雌とペアを組む個体とはどんな個体なのか?
サケの仲間には、残留型と回遊型という2つの生活型があります。残留型(ずっと川の中で生活する個体)の雄は回遊型(降海型)に比べて体が小さく、産卵場では雌を巡る闘争にはほとんど参加しません。そのため、産卵の瞬間にペアの隙間に割り込んで繁殖を行います(スニーキング)。一方、回遊型の雄は体が大きく、二次性徴が顕著に発達します。産卵場では回遊型雄同士のファイティング(体当たり、噛み付き、追いまわし等)により雌を獲得します。一般には、体の大きな雄から順に、順位を形成することが多いようです。
それでは、この二次性徴の持つ意味は何でしょうか?

この写真は、カラフトマスの雄同士が体当たりをしている場面です。セッパリは、この写真のように闘争時に体を保持する盾の役目を果たすと考えられています。また、他の雄や雌に対して自分の体を大きくみせる役目を果たしているとも考えられます。

婚姻色は、雌へのセックスアピールや、雄同士では順位を表す指標になっていると考えられます。産卵行動を観察していると、雌に一番近い場所にいる雄の婚姻色ははっきりと見え、劣位な雄では模様がくすんで見えることが多いです。
鼻曲がりは、雄同士の闘争に直接使う部分です。大きなアゴで相手に噛み付き、傷を負わせる役目に特化している部分と考えられます。
体が大きければ二次性徴もそれに応じて顕著になります。繁殖成功率を考えると雄は皆体が大きい方がよいのでは?と考えても必ずしもそうではないようです。
産卵に遡上する河川の規模や、遡上する時期の気象条件によって同じ川でも年によって「いい男の条件」は一定ではないようです。例えば、水深が深く流れの速い場所で産卵を行う集団では、体が大きい雄の方が安定的に繁殖に参加できると考えられます。しかし、水深が浅い上流まで遡上して産卵を行う集団において、大きな体はファイティングには向いても産卵場への遡上には向かないでしょう。それぞれの河川に見合った魚が長い年月をかけて自然選択され、その川を象徴する形として残っていると考えられます。
以前、釣り場で出会った古老から聞いた「この川の魚はこんな体つきが特徴」、「あの川の魚は(昔は)太かった」という話には、こんな仕組みが関係しているのではと、ふと考えました。
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